新しい価値を纏う人
2021年秋にデビューした<DÉPAREILLÉ(デパリエ)>。
前回に続き、人気スタイリスト仙波レナさんに新しい価値の事、
時代が変わっても価値が変わらないと思える物や
自分らしいお洒落についてお話をお聞きしました。
INTERVIEW
Q.新しい価値と聞いてイメージする事は?
コロナ禍となって価値観も含め様々な事が、急速なスピードで変化しました。今のやり方も昔のやり方もそれぞれいいことがあり、今は私自身、模索している段階です。
洋服に関して言えば、家にいる間に持っている服を見直し、丁寧に作られたもの、裏に至るまで仕立てがきれいなもの、体がきれいに見えるもの、が手元に残っているのだとあらためてわかりました。作り手が何を重視しているかって、ちゃんと服に出るのではないでしょうか?
最近はサステナブルであることが常に求められますし、古いものを受け継ぐ事も大切ですが、素材にしてもデザインにしても、何か進化しなければファッションのカルチャーは止まってしまう。私はそれに挑戦し、新しい価値を表現しようとするブランドに共感します。
Q.時代が変わっても価値が変わらないと思える物とは?
撮影の参考に時々見返す写真集が何冊かあります。1冊はスーパーモデルを起用した、ジャンニ・ヴェルサーチ時代の<Versace>広告写真などを収めたもの。ヘアメイクやポージングが今も参考になるのはもちろん、女性像や世界観を作り上げる事で、1枚の写真が見る者にどんどんと想像を膨らませる、そんな写真の力を感じます。
もう1冊は世界の少数民族を撮影したもの。衣装、化粧、髪型、アクセサリー、全てにその民族ならではの意味があり、時々スタイリングの参考にします。『Summer of the Fawn』は子供達を撮影したもので、装丁もデザインもクラシックでいいし、1枚の写真からその奥にあるストーリーを感じさせるところが好きです。いずれも新しい本ではありませんが、スタイリングの本質となるものがあり、インスピレーションを与えてくれます。
時間がたってもめくるたびに何か新しい発見がある…そこに価値を感じるのかもしれません。
Q.ジャケットやアウターをどの様に仙波さん流に着こなしている?
ボディコンシャスなシルエットや肌を見せる着こなしが好きで、アウターの下にもボディスーツやビスチェなどをよく合わせます。若い頃は人の視線が気になって、あまり肌見せのファッションができなかったけれど、年齢を重ねバストの位置が下がったことで、やっと胸元が開いた服も抵抗がなくなりました。年齢による体型の変化で着られなくなるものもあるかもしれませんが、私は逆に幅が広がりました。もし肌見せのファッションが気になるなら、年齢を気にせずトライしていいんだ、そう思ってもらえれば嬉しいです。
日本人は自分の欠点を探し、そこが隠れる服やコーディネートを探しがち。でも、誰だって自分が好きなところがひとつくらいあるはずです。ネガティブな方にばかり目を向けず、好きな部分をアピールするスタイリングをぜひ楽しんで欲しいです。
CHOICE
今回もお洒落のプロである仙波さんに<DÉPAREILLÉ>の2021年コレクションの中から、
今選ぶべきアウターをセレクト頂きそのおススメポイントについてお聞きしました。
グレンチェックテーラードジャケットグレンチェックテーパードパンツメンズ仕立てのパターンにこだわったジャケットとパンツ
リサイクルウールとポリエステルに軽くストレッチをきかせた着心地の良い素材を使用しています。ジャケットはゆとりのあるストレートのシルエット、パンツは腰まわりに安定感のあるワイドテーパードです。
「内ポケット、背抜き、ベンツの処理など、テーラードの技術が細かい部分に活かされています。パンツもレディスには珍しくウエストにテングがついているので、腰にしっかりおさまる感じ。普段は単品でコーディネートすることが多くても、あらたまった場に行く時などに役に立つので、私はセットアップで揃えておくのがおすすめです」
ノーカラーダブルフェイスコート
ダブルフェイスロングジレキモノスリーブのコクーンシルエットの
コートとVネックのジレ
光沢感と保湿性に優れた、カシミアに近い風合いの国内産ウール素材を使用しています。一枚仕立てなので、重ねても軽い着心地。コートはホックで留めるデザインで、大きめのポケットがポイントです。
「上質なダブルフェイスのコートはラグジュアリー感がある、大人の女性にふさわしいアイテム。ジレと重ねて纏えばそれだけでお洒落で、シンプルなコーディネートでもサマになります。私はコートを脱いだ時に見える裏も美しくあってほしい。その点、このコートとジレは表も裏もなめらかな素材感と丁寧な作りでとてもきれいです」
カシミアラップコートイタリアのカシミアを贅沢に二重織りにして使った
ラップコート
軽いのにしっかり防寒できる着心地はカシミア100%ならでは。細かいストライプの織り柄がシンブルなデザインに表情を与え、肩を少し落とすことで柔らかいシルエットに仕上げています。
「最近は薄手のロングコートが多い中、この重厚感がいい。私は年中薄着のことが多く衣替えもしないので、少し寒くなったら、Tシャツの上にさっと羽織って出かけたいです。二重になっているので、これ一枚でもしっかり温かい。少し丸みのある女っぽいシルエットもいい感じだと思います」
ロングピーコートウールを強く縮絨したあと、起毛・剪毛する
ビーバー仕上げを施したロングピーコート
一見、シンプルなシルエットですが、前は肩をドロップさせ、後はラグランにしているため、袖を通すと肩の後ろあたりにふくらみが出て、独特のフォルムが楽しめます。
「丸みのあるシルエットでクラシカルな雰囲気。オーバーサイズっぽいシルエットは、さらりと羽織るだけで着こなしにこなれ感が出ると思います。赤は目立つ気がしますが、私の中では誰もが似合うベーシックな色。実は何にでも合わせやすいし、1点差し込むとコーディネートがキマるので、私自身好きでよく着ます」
キャメルウールステンカラーコート無染糸で仕上げたサステナブルな素材のステンカラーコート
キャメルの自然脱落した毛で作った糸を使い、ウールにはないハリやコシが魅力です。
リラックス感のあるフォルムですが、袖幅を大きめにし、見頃がコンパクトに見えるラグランスリーブにしています。
「レディスではあまり見かけない、ちょっと粗野な感じがする素材感がカッコいい。 ビンテージや古着が好きな人には、すごく響くのではないでしょうか。ユニフュームの外套を思わせるメンズっぽいデザインと作りなので、スーツの上に羽織っても似合いそうです」